「どうした、瑞季。
憔悴しきって」
了弥の家のソファで行き倒れていると、帰ってきた了弥が外したネクタイをくるっと丸めながら言ってきた。
「いや……神田くんと話してたら、どっと疲れちゃって」
鞄も横に放ったまま、既に愛着さえ湧いている真島家の素敵なソファに瑞季はすがっていた。
「あの人の言うこと、なにが本当かわかんない〜っ」
と言ったが、はいはい、と言いながら、了弥はキッチンの方に行ってしまう。
「ただひとつ、本当らしいのは、猫舌だって最初から知ってたってことだけだわ。
そういえば、邪道だけどって言いながら、程よくパリパリになってきたもんじゃを皿に入れてくれてたのよ、初めから」
と言うと、電気ケトルにスイッチを入れて戻ってきた了弥がいきなり瑞季の髪に触れ、鼻先に持っていく。
「道理で、いい匂いがすると思った。
もんじゃか」
「えっ?
髪に匂いついてる?」
と言いながら、了弥につかまれた髪に触れ、身を引いたが、逃げかけたのは、髪に匂いがついているのが恥ずかしかったからではなく、了弥の顔が近かったからだ。



