うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「素敵な本屋さんだったね」
と言うと、神田は微笑み、

「相楽さんなら、そう言うと思ったよ」
と言う。

「それにしても、神田くんが学校の先生って、ちょっと意外っていうか」

 なにかこう、エリートサラリーマンになりそうな感じだったのだが、と思いながら、そう言うと、
「そういえば、一昨日もそんなこと言ってたね」
と言われ、どきりとしてしまう。

 一昨日……。
 私、この人と、どんな会話してたんだろうな。

 早めに来たビールに口をつけたあとで、神田はグラスの向こうから、にやりと笑って――

 ……幻覚じゃないよな。

 にやりと笑ったよな、今。

 さっきまでの爽やかな笑顔を脱ぎ捨てたように、にやりと笑って神田は訊いてきた。

「どうしたの?
 相楽さん、顔色が悪いよ」

 き……気のせいですよ、と言おうと思ったのだが、声が出なかった。

 だが、神田は更に畳み掛けるように行ってくる。

「もしかして、記憶がないとか?」

 貴方、超能力者ですか?