うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 


 しばらくすると、神田がやってきた。

「お待たせ」
と言うので、

「いいえー。
 そんなに待ってませんよ、イケメン先生」
と言ってやると、ははは、と笑う。

 ……やっぱり、サラッと流すな、この人。

 了弥だったら、小突かれてるところだな、と思いながら、
「ちょっと待って」
と言った。

 長く店内を見せてもらっていたので、二冊程文庫本を買うことにした。

 レジに行っている間に、神田は本棚を見ていたようだ。

 ハードカバーの専門書だ。

 レジからそれを眺めていた瑞季のところに、今度は神田が本を持ってくる。

「待ってて。
 僕も買うから」
と言うので、笑ってしまう。

 なに? と訊く神田に、
「ううん。
 これでまた、私が本棚見に行って、新しい本持ってきたら、エンドレスだな、私たち、と思って」
と言うと、神田も笑った。

 グレーのニット帽を被った店のおじいさんが、にこやかに、
「そりゃ、うちの店としては嬉しいけどね」
と言う。

 神田が本を買うのを待って、懐かしい匂いのするような書店を出、すぐ近くのもんじゃ焼きの店に行ってみた。