うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 



 了弥が予備の鍵で開けてくれ、部屋に入ると、ソファに下ろしてくれる。

「靴は脱げ」
と言いながら。

 笑ってしまう。

 靴を脱ぐと、了弥がそれを玄関まで持っていってくれた。

 その背中を視線で追っていると、トイレが目に入った。

「そういえば、なんで、トイレットペーパーにバーカとか書いたのよ」

「だって、お前が怒ってるかな、とかいろいろ悩んでたのに、覚えてないとかなんなんだと思って。

 出先から戻る途中、お前の家に寄って。

 ちょっと前の晩のことを思い出しながら、感慨に浸るというより、腹を立てていて」

 ちょうどポケットに出先で使った油性マジックがあったんだ、と了弥は言う。

「本当は、白い壁かベッドに書いてやろうと思ったんだが」

 子供か。

「これ、お兄さんの家だったなと思い出して。
 流せるトイレットペーパーに書いたんだ」

 一応、気は使ってくれたわけか。

 気の使いようが、ちょっとおかしいが。

「お茶でも淹れるよ」
と溜息をついて立ち上がる。