うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 私の苦悩を知っていて、何故、今までなにも言わなんだかーっ!
と小僧を取って食おうとする鬼婆くらいの勢いで、睨んでみたが、こちらを見ない。

 朝日と神田はまだ二人で呑みに行くようで、彼らと別れ、了弥と夜の街を歩いて帰った。

「今日はあっち帰るか?」
と了弥が言う。

 確かに、此処からなら、瑞季のマンションの方が近い。

 ……鍵も二本あるようだしな、と思った。

「神田、香月、朝日、了弥か。
 他は名字なのに、了弥と朝日くんだけが名前で呼ばれてるのは、同じ名字だったからなのね」

「香月と会ったときは、もう真島に戻ってたんだが、神田が、名前で呼ぶからあいつもそれに合わせて呼んでたようだな」
と了弥が言う。

「いや……思い起こせばいろいろとあるのよ。

 わかってる。
 気づかなかった私が悪いのよ」

 でも言ってくれたって、と了弥を見上げる。

「……お前は望まなかったんじゃないかな、と思ってたから。

 でもあの朝、機嫌が悪いながらも話しかけてきたから。

 ああ、許してもらえたのかな、と思ってたら、なにも覚えてないとか抜かすから、俺の方が卒倒しそうになった」
と言う。