うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「んー。
 ちょっと今、予定がわからないんだけど」

 了弥のいいなりになるわけではないが、一応、今、世話になっている手前、そう言ってみた。

「ところで、ちょっと訊いてみるんだけど。
 昨日、私、誰と帰ったかな?」

『え?
 店から誰と出たかってこと?』

「そ、そう」
と言いながら、おかしなことを訊く奴だなと思われたかな、とビクビクする。

『ああ、僕だよ――』
と神田は言った。

 そのとき、初めて、今の神田の姿が頭に浮かんだ。

 子どものときの印象のまま、上品な美形に育った神田の姿が。

 そ、……そういえば、そうだったかも。

 店で話した勢いのまま、一緒に暖簾をくぐる神田のマボロシが見えた。

「あ、ごめん。
 CM明けたね」
と動揺しながら言うと、CM? と訊いてくる。