「来たよーっ」
という声がして、未里が駆け込んでくる。

「梶原さん、子供どうしたの?」
と朝日が訊いている。

「寝かしつけてきたのよー。
 私、チューハイ、ライム」
と座る前に壁のメニューを見て、側を通った店員さんに頼んでいた。

 席に着こうとして、了弥の隣しか空いてないことに気づくと、赤くなり、
「えーっ。
 私、佐藤くんの横はちょっと緊張しちゃうなー」
と言う。

「瑞季か、佐藤くん代わってよ」
と言っている。

 いや、それだよ、と思いながら、瑞季は聞いていた。

「やだよ。
 僕は姫の横がいい」
と朝日は拒否する。

「しかも、なに、さりげなく、神田の側に行こうとしてんの?」

「だって、神田くん好みなんだもん」

「じゃあ、なんで僕と付き合ったの?」

 いやあ、と未里は笑っているが、本当は単に、神田の側が一番緊張しそうにないからだろう。

 結局、神田が了弥の横に行き、瑞季を挟んで、朝日と未里が座ることになった。

「あのー、了弥。
 お母さんの旧姓って……」

「佐藤」

 ですよねー……。