うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 佐藤朝日だ……。

「言ったじゃない。
 あの、違う風に映ったりするから」

「神田くん、顔色悪いよ……」

 なんとか誤魔化してくれようとしていた神田だが、こうしていても埒があかないと思ったのか、かなり迷って、その一言を言った。

「朝日があの日着てたシャツだよ、これ」

 瑞季は目を閉じ、考える。

 こうして、現実を突きつけられてみて初めて、本当に冷静に。

 あの晩のあれ、本当に朝日だったろうか?

 どうにも冷静に受け止められないあの夜の記憶を掘り起こそうとする。

 でもそう。
 記憶じゃなく、感覚を信じてみたら……。

 他の誰でもない。

 誰かの想いや、こんな物的証拠に頼るんじゃなくて、自分の気持ちを信じて。

「……相楽さん?」

 瑞季がもう一度、手を伸ばし、倍速のボタンを押そうとしたとき、誰かがその手を止めた。

「はい、そこまで」

 瑞季は振り返る。

 佐藤朝日が立っていた。