うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 スマホを黙って見つめていたが、
「やっぱ、かけるっ!」
と言うと、おいおい、という顔をする。

「あっちで、かけてくる」
とスマホを手に廊下に出ようとすると、ちょっと待て、と襟首を掴まれた。

「此処でかけろよ」

「なんでよ。
 ピラミッドの邪魔になるじゃない」

「それを言うなら、神田も見てるかもしれないだろ」

 終わってから、かけろと言うが、そしたら、十一時を過ぎてしまう。

 人に電話をかけられるような時間ではなくなるではないか。

「わかった。
 CMのとき、かけるわ」

「裏番組見てるかもしれないだろ」

「なんなのよ、あんたは……」

 いいから、此処でかけろと言うので、CMになった隙にかけてみた。

『はい』
とすぐに落ち着いた声がする。

『……相楽さん?
 どうかした?』

 少し戸惑うような、その言い方に、あ、この人は関係ないかな、と思った。