うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「いいじゃん。
 なんでも言うこと聞いてあげるから、名前で呼んで」

 ええーっ? と瑞季が困ったような声を上げる。

 声が反響しているが、何処からかけているのだろうな、と思った。

「言って」
「れ、玲くん?」

 ……なんか満足だ。
 子供のときにも呼んでもらったことないのに。

『あのね、神……玲くん、頼みがあるの。
 ちょっと付き合って』
と瑞季は言ってくる。

 瑞季があの可愛い顔で、お願い、と手を合わせている妄想が浮かんできて、つい、ほいほい言うことを聞きそうになる。

 だが、そこは、ぐっと堪えて、
「頼みってなに?」
と訊いてみた。

『あの夜の相手は自分だって、朝日くんが言ったの』

 えっ? そんなはず、と言いそうになる。

 いや、朝日の可能性もなくはないが、自分は違う相手を想定していた。

 瑞季の性格から言って、それ以外ないと思っていたのだが。