うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 なんなんだ、ほんとに、と思いながら、少しほっとしてもいた。

 朝日が瑞季になにもしていないと言うのなら、そうなんだろうと思って。

 あいつはそこで気を使って、なにもしてないなんて嘘をつくような人間ではないから。

 人でなしな友人ほど、隠し事がなくてありがたいときもある。

 自分のデスクに戻りながら、通り過がりに瑞季の真後ろで、ぼそりと言った。

「……淫乱女」

 いや、瑞季はなにも悪くない。

 なんだかわからないが、神田も朝日も、この素っ頓狂な女がいいと思っているだけの話なのだが。

 一体、こいつの何処がそんなにいいんだと思って腹が立ったのだ。

 確かに綺麗だが、それを補って余りあるほど、間が抜けているし、どうかしている。

 神田に言わせれば、まさしく、
『だから、お前が言うな』
 なのだろうが。

 いきなり、通りがけに斬られるみたいに、淫乱女、と身に覚えのない罵りを受けた瑞季が振り向き、
「了弥っ!」
と叫ぶ。

 みんなが顔を上げて、瑞季を見た。