うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 溜息をついて、他の誰かにも訊いてみようかな、とスマホのアドレス帳をいじっていると、
「兵馬俑の友だちはなんだって?」
と言いながら、立ち上がり、了弥が来る。

 聞いてんじゃん、と思いながら、スマホを見ていた瑞季は叫んだ。

「神田くんだっ」

 はあ? と了弥が上から覗き込む。

 入れた覚えのない、神田玲の電話番号が登録されていた。

「……子供のときの番号とか」

「持ってたのか? 子供のとき、このスマホ」

 だよね、と呟きながら、まったく見覚えのないその番号を見る。

「かけてみようかな」

「なんて訊くんだ。
 昨日、私がお持ち帰りしたの、神田くんですか? って?

 なにも連絡してこないってことは、ただの火遊びか、その場の勢いってことだろ」

「……そうか、そうよね。
 相手も追求されたくないから帰ったわけよね。

 つまり、夕べの人は悪いひと」
と言い切ると、

「まあ、そうとは限らないが……」
と言ってくる。

 私が傷つかないように言ってくれているのだろうかな、とちょっと思った。