うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「瑞季っ」
と誰かがいきなり背中に飛びついてきた。

 見ると、エレナだった。

 彼女の長い髪からはいつもいい香りがする。

「誰誰誰っ。
 今のすごい車の美形はっ」
と言ってくる。

 目敏いな~。
 よく車の中に居る人の顔まで見えるな、と思っていた。

「小学校の同級生。
 たまたま一緒になって、送ってもらったの」

「どうやって、たまたま朝、一緒になるのよ」
と言うエレナを引きずって、社屋に入る。

 外であんまり、わあわあわ言うな~と思いながら。

 自分のフロアに上がると、了弥と出くわした。

「……おはよう」
と言うと、

「おはよう」
といつも通りに返してくる。

 つまり、いつも通りに愛想もなくという意味だが。

 エレナが此処はさすがに気を利かせて、余計なことを言わずに、さーっと居なくなった。

「ごめん、昨日連絡できなくて」

 社内だが、課長、無断外泊してすみませんでしたというのも変なので、さすがに此処はタメ口でしゃべる。