うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 



 朝日に連れて行かれたのは、案の定、ビジネスホテルの朝食などではなかった。

 駅近くの大きなホテルで、早くから開いている店に連れて行かれて、服を買われて、着替えさせられ、スカイラウンジのバイキングに連れて行かれた。

 なんだかこう、なすがままだな、とガラス張りのエレベーターから、あまり下を見ないようにして、外を見ながら瑞希は思う。

 朝日はエレベーターでは沈黙し、スマホを一人、チェックしていた。

「あのー、洋服代、返すから」
と話しかけると、即行、
「いらない」
と言う。

「でも……」

「いらないって言ったらいらないよ」

「だって、私がおにいちゃんに払ってる家賃の三倍だよ、この服」
と言うと、朝日はそこで初めて笑い、

「身内なのに、結構取ってるんだね、家賃」
と言う。

 そうなのだ。
 親は、家は住まないと傷むから住んでもらった方がいいんだから、タダにしてやりなさいよと言ってくれたのだが、おにいちゃんには容赦なく踏んだくられている。