うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 そ……そこからもう覚えてなかった。

「そ、そうだったっけ。
 あのさ、私って、誰と呑んでた?」
と言うと、は? と言われる。

「私、誰と呑んでた?
 未里たち以外に」

『なに、記憶ないの?
 お持ち帰りされちゃったとかー?』
と笑っている。

 いや……お持ち帰ったようなんですが、と思いながら、
「そうじゃないけど」
と言う自分を振り返り、了弥が見ている。

 未里は声が大きいから、話が筒抜けになっているのだろう。

 いや、いいから、お前はテレビでも見とけ、と思いながら、顔を背ける。

『あ、でも、そういえば、あんた、神田くんと訳わかんない話で盛り上がってたよ』

「神田くん?」

 神田玲(れい)の姿はすぐに浮かんだが、それは子供の頃のものでしかなかった。

 色の白い、整った顔をした子で、確か大きなおうちに住んでいた。

 みんなで遊びに行ったら、綺麗なお母さんが手作りのケーキを振舞ってくれてたな、とそのケーキの味ばかり思い出し、すぐに、今の神田玲の顔が浮かんでこない。