うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「あの話をするなって意味じゃないよ。
 相楽さんはたぶん、僕と神田と了弥が同じ大学だってことも知らないんだ。

 神田も進んで当時の話、したがらないだろうからね」

「お前、了弥を恨んでるのかもしれないけど、あの子には関係ないだろ?」

「……恨んでる、か。
 恨んではない気がする」

 大真面目に考えてみたあとで、朝日は言った。

「自分でもよくわからないんだよね。
 ああ、ほら、客が呼んでるよ」
と香月を追い払う。

 香月はまだ振り返りながらだが、そちらに行った。

 まあ、香月のことだから、了弥に連絡するとか、そういう無粋な真似はしないだろうが、と思う。

 香月は、職業柄なのか、いつも中立に立って見守っている感じだから。

 瑞希が戻ってくるまで、少し時間があったし、話の長い客だったらしく、香月も戻っては来なかった。

 ちらと瑞希の鞄を見る。

 相楽さんは、スマホの電源を落として置いたのに気付いてないみたいだし。

 どのみち、今、此処に居ることを了弥には言えないだろう。

 そう思っていたとき、瑞希がトイレから出てきた。