うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「えっ? そうなんですか?」

「此処でバイトしててそのまま居ついちゃったんだ」

 佐藤くんの大学って何処だっけ?

 たぶん、どっかいいとこだろうに。
 親御さんは、なにも言わなかったんだろうかな、と余計なことを考えてしまう。

「ねえ、相楽さんは、お酒、なにが好き?」
と後ろの棚を見ながら朝日が訊いてきた。

「いや、私は、こういうお店はあんまり来たことないし。
 よくわからないんだけど。

 普段は、安いワインとかしか呑まないし」
と言うと、

「ふーん。
 じゃあ、どんなお酒が嫌い?」
と訊いてくる。

「あー、水割りとかかな。
 味も良くわからないし」
と顔をしかめると、

「じゃあ、水割りで」
と言う朝日に、香月は、おいおい、という顔をする。

「いや、この相楽さんはこう見えて悪い子なんだよ。
 ちょっと、おしおきしなきゃ帰す気にならないから。

 それ呑んだら、帰っていいよ」
と笑顔もなく言ってくるが、今日最初に会ったときより、ずいぶん表情は柔らかかった。