うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 



 うっ。
 大人の店だ……。

 瑞希はその店を一歩入ったところで立ち止まる。

 壁には洒落た酒瓶がずらっと並んでいるし、店内の照明は薄暗く、客層も落ち着いている。

 いつもみんなで騒いで呑むような店とは全然違う。

 こういう雰囲気の店は、忘年会のあと、上司に連れられて、みんなで行ったくらいだ。

「帰りたそう」
とこちらを見て、朝日が笑う。

 余裕の朝日を見上げ、さっきまで、ファミレスでお子様メニュー満足そうに食べてたくせに〜、と恨みがましく睨んでしまう。

 カウンター席に着くと、如何にも夜の街の男といった感じのバーテンダーが微笑んで、
「佐藤先生、今日の彼女、可愛いね」
と言ってくる。

「今日の彼女とか言うなよ」
と朝日が素っ気なく言う。

「こいつは、香月司(こうづき つかさ)、大学のサークルで一緒だったんだ」
と朝日は彼を手で示す。