うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「お医者様って、こういうときまで、健康にうるさいの?」
と言ったら、

「いや、なんか、注意するのが癖になっててさ」
と言う。

「神田とかもそうだよね。
 職業病」

 はは、と笑ったあとで、
「取ってきたら? 佐藤くん」
と言うと、立ち上がり、何故か珈琲を取ってきた。

「……今、私に駄目って言ったくせに」
とそれを見ながら言うと、

「君が珈琲のいい香りをさせるからだよ。
 それに、僕は自分の身体のことは考えたくないの」
と言ってくる。

「なに言ってるの。
 あんなにおばあちゃんたちに慕われてるんじゃない。

 先生が体調崩して入院したりしたら、おばあちゃんたちまで具合悪くなっちゃうわよ」

 朝日は頬杖をついて、煉瓦の仕切りの上の緑から他所を見ながら不満げに言う。

「相楽さんは、医者でも教師でもないのに、説教してくるよね」

「いや、別に説教じゃないけど。
 そんなことになったら、おばあちゃんや、心配している渡瀬さんたちが可哀想だと思うから」