うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「こんなこと普段言わないんだからね。
 僕終わったら帰れって言うから」

 それはとんだ鬼畜だな、とまだ、ぼんやりしたまま思っていた。

 今にもファンサービスで手を振りそうなアイドル顔でこれか。

 未里が近づくなと言ったはずだ。

「僕を騙したから悪いんだよ」
と朝日は言う。

 可愛い顔が能面のようにつるんとして冷たく感じられて怖い。

 ベッドに手をつき、身を乗り出してきた朝日は唇にキスしかけてやめた。

 額に軽く唇で触れ、
「行こう。
 僕、お腹空いたから」

 何処でも君の行きたいところでいいよ、とそこだけやさしく言ってくる。

「君はちょっと人を信じすぎだね」

 そう言いながら、朝日は側の椅子にかけていた上着を取った。

 なんだろう、この状況。

 あんなうっかりな朝は二度とないと思っていたのに。

 でもなにか……。

 ちょっと気になる……と思っていると、朝日は、
「早くして、相楽さん」
と何故か急かしてくる。