うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

『タクシー代は僕が払うから。
 ああ、なんだったら、そこからタクシーで来てもいいよ』

 そんなことを言ってくれるが、全部、耳を素通りしていた。

 なんて言って、朝日の電話を切ったのかもわからない。

 しばらく、階段に座り込み、ぼんやりしていたようだ。

 ああ、早く戻らないと真島課長に怒られる、と思ったとき、

「うわっ。
 どうしたの? 瑞希ちゃんっ」
と下から声がした。

 霊かと思ったっ、と失礼なことを言いながら、笙が階段を上がってくる。

 いや、そのくらいぼんやりしていたようだ。

 終わった……。
 なにもかも、と思っていたが、なにが終わったのか、自分でもよくわからなかった。