うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「あ、あの……実は、あの晩の記憶がないんだけど」
と言うと、朝日は、へえ、と冷ややかに言ったあとで、

『まあ、そんなことじゃないかと思ってたけど。
 相当酔ってたみたいだからね。

 危ないよ、女の子が』
とまた此処で説教される。

 そ、そうですね。
 すみません。

 普段はそんなに呑むことはないのですが、みんなに会えた懐かしさからつい、と思ったが、声には出せなかった。

 なにもかもが今更遅い言い訳のような気がしてきたからだ。

『まあ、全部なかったことにしたいのなら、それでもいいけど。
 これ、僕が持っててもいいわけ?』

  金属とプラスチックが擦れ合うような音がした。

 鍵とそれについていた予備と書かれたプレートのような気が……。

 だが、口に出して確かめたくはなかった。

『今日、仕事終わったら来て。
 ああ、早く終わったら、迎えに行ってあげるけど。

 今日は、話の長いおばあちゃんが来る日だから』

 朝日は最寄駅を教えてくれ、そこからはタクシーに乗って、佐藤医院まで来いと言ってきた。