うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜






 病院は、一時過ぎまでやってるところが多いからと、二時過ぎに他の部署に行った帰りに人気のない別館の階段でかけてみることにした。

 昨日の神田に対する応対を聞いていたので、すぐには捕まらないだろうなと覚悟しながらかける。

 だが、朝日は、三度目の呼び出し音が鳴り終わる前に出た。

「あの……」

 私、相楽瑞希だけど、覚えてる? と言おうとしたのだが、あの、で話は遮られてしまった。

『相楽さん、遅いよ』

 いきなり、朝日がそんなことを言い出したからだ。

 えっ、遅い?

 神田くんに番号聞いてから、かけてくるまでが遅いということだろうか、と思っていると、
『あのまま、しらばっくれるつもりかと思った』
と言って、朝日は笑う。

 いや、笑ってはいるのだが、何処か冷たい口調だった。

「え、え……と、なんの話?」
と鼓動が速くなりながらも問うと、

『まさか、全部なかったことにする気?』
と朝日は言った。