うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

『私、あの日、佐藤くんと一緒に帰ったっけ?』

 うん。
 駅まで一緒に帰ったよ、でもいいし。

 いや、一緒には帰ってないよ、でもいい。

『そうなんだー。
 ありがとう。

 またいつか、同窓会あるといいね。
 じゃっ』

 そうそう。
 それそれ、それで終わりよ。

 あのときの相手が朝日じゃないとわかるだけでいい。

 もう充分、自分は調べた。

 これで全部終わりにして忘れることにする。

 未里やエレナが言うように、目の前の幸せを逃がして後悔したくはないからだ。

 まあ、では、目の前の幸せがなにかと問われると困るところだが、と思いながらも、眠っている自分に了弥がそっとしてきたキスを思い出していた。

 彼の本心はまだわからないが。

 少なくとも自分は嫌ではなかった。

 ……と思う。

「ちょっと、なに一人で照れてんの?」

 呆れたように言うエレナの向こうに、なんとなく了弥の姿を探したが、今日は社食には来ていないようで、居なかった。