うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 




「一緒にお風呂入っちゃえばよかったのにー」

 大きな声で言ったエレナに、周りの社員たちが、ギョッと振り返る。

 エレナ……此処は社食だ。

 スプーンを持つ手を止め、瑞希は固まる。

 今日はカレーな気分だったので、カレーにしてみたのだが、今、一気に食欲がなくなったぞ、と思っていた。

「なんなのよ、もったいない~。
 課長がジョークで言ったとしても、そこから話が進んだかもしれないのに。

 もう~、なにやってんの~。
 そんなんだから、今まで、浮いた噂のひとつももなかったんじゃないの?」

 瑞希はチャンス逃しすぎー、と説教されたが、エレナの声の大きさにハラハラして、内容が頭に入ってこない。

 浮いた噂ねえ。

 昨日の神田からのメールで、朝日の連絡先はわかった。

 一人ではかけるなとは言われたのだが、だからと言って、神田の立ち会いの許にかけるのも変だし。

 一言、朝日に訊けば、終わることではないだろうか。