うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 


 当たり前だが、入ってみれば、いつも通りの我が家で、特に荒らされた形跡もない。

 ……いや、出て行く前に私がずいぶん荒らしているが。

 荷物を慌てて用意するのに。

 そこから変化はなさそうだった。

「いっ、いつもは、いつもはもっと片付いてるのよっ」

 思わず、神田に言い訳してしまうが、はいはい、とやさしく微笑む神田は、まったく信じてはいなさそうだった。

 肉は解凍しなければならないので、早めに取り出し、せっかく戻ってきたんだからと、あれやこれやと荷物を持ち出す用意をした。

 よく考えたら、特に害がなさそうなら此処に帰ってきたのでいいのでは、という考えがちょっと頭をよぎったが、気づかぬふりをした。

 そこで、ふと、気づく。

 ずいぶん家を空けているが、冷蔵庫の中身は大丈夫だろうか。

 腐ってるんじゃ、と冷蔵庫まで戻り行きかけて、やっぱ、やめた、と思ったとき、了弥の側に居た神田が言った。

「トイレ貸してね」

 うん、と言ったあとで、
「ああっ。
 バーカは取っておいてね」
と言うと、なんで? と言う。

「記念に?」

「違うよ。
 証拠だから」

 了弥が阿呆か、という目で、キッチンの近くから見ていた。