うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

『県外だったりしてねー』
と神田は笑う。

 そ、そういう可能性もあったか。

 県外の佐藤医院とか。
 もうどうやって探していいのかわからないんだけど。

 とりあえず、実家に訊いてみるか、と思ったら、
『ああ、朝日は、実家と仲悪いからかけない方がいいよ』
と言われる。

 うっ、と詰まった。

『まあ、せいぜい頑張って。
 ああ、この日曜とかに、僕とデートしてくれるんなら、車で連れてってあげるよ。

 朝日の今の家まで。

 ……ちなみに、朝日の住所とか電話番号。

 他の女の子とかに訊いても無駄だよ。

 朝日、前に女の子に付きまとわれて、閉口したから、絶対、誰にも教えないし。

 男も無理だよ。

 あんまり信用しないから、誰のことも』

 そ、そんなキャラだったっけな、佐藤くんって。

 いつもニコニコしていたようなイメージが、と思っている間に、
『じゃあ、連絡待ってるねー』
と言って、神田は電話を切ってしまう。