うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 振り向き、おかえり、というように彼を見たあとで、

「わかった。
 ありがとう」
と言って、スマホを切る。

 了弥は、テーブルの上の紙袋を覗いていた。

「あ、それ、友だちがくれたの。
 晩ご飯にって」

 食べよう? と立ち上がりかけたとき、スマホがメールの着信を告げた。

 誰だろう? と思って見ると、エレナからだった。

『今日、真島課長にキスしてみた。
 やっぱり、課長のこと好きなわけじゃないみたい。

 というわけで、瑞季を応援するから、なんでも言って。

             エレナ』

 ……ある意味、公明正大な奴だな、と思いながら、もう一度文面を読む。

 読み違いかな。

 読み違いならいいな、とまた、現実逃避しかけていたからだ。

 だが、何度読んでも、そのメールには、『真島課長にキスしてみた』と書いてあった。

 さすがにすぐに返信する気にはなれずに、それをソファに放ると、気を落ち着けるために、大きく息を吐いた。