うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「鍵を付け替えてもらうと言ってもすぐというわけにも行かないだろ?」

「えーと……でも、申し訳ないし」
と言ったが、了弥はそこで、腕時計を見、

「五分だ」
と言い出した。

「五分以内に支度しろ」

「えっ」

「今日、九時からピラミッドの番組があるのを忘れてた」
とさも、重大事のように言う。

「五分で支度しろ」

「テレビなら、此処で見ればいいじゃん」
と少し遅れている部屋の時計を確認しながら、瑞季が言うと、

「呑気に並んでテレビなんか見てて、いきなりわからん奴が入ってきて、ぶす、とか後ろから刺されたらどうするんだ」
と言ってくる。

「いや、トイレットペーパーに、バカとか書くような、しょうもない嫌がらせをする人が、ぶす、とかいきなり刺すわけないじゃないの」

 そう言うと、
「……なかなか鋭い読みだな」
とは言ったが、

「じゃあ、十分に負けてやる。
 早くしろ」
と結局、急き立てられる。

 なんだかな、と思いながらも、逆らえない迫力があったので、慌てて荷物を詰めた。