うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 



 神田は瑞季がマンションに入っていくのを見送っていた。

 マンションの前庭の木々が夜風に揺れ、白い月が、ぽかりと、ちょうどマンションの上に浮かんでいる。

 風情があるな、と思った。

 ……このマンションでなければ。

「なんで途中でやめたって?」

 急に背後からした声に振り返ると、腕を組んだ男が路地に立っていた。

「いやあ」
と神田は振り返り、笑う。

「お前が見えたからだよ――。

 了弥」