うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「途中でやめたのは、今でも、本気で君を好きだと気づいたからだよ」

 いや、途中で気づかないでください。

 っていうか、本気で好きじゃないのなら、そもそもしないでください。

 っていうか、好きじゃない場合の方が出来ちゃうってのが、そもそも変じゃないですかね?

 っていうかっ!
 私が嫌がってる時点で、なにもするべきじゃなかったんじゃないですかねっ?
と思ったが、電車の中なので、口に出せなかった。

 いや、誰も居なくても言えなかったかもしれないが。

 だが、神田は、こちらの顔を見、笑ったあとで、
「相楽さんは、本当に口ほどに物を言う目だね」
と言い、

「だって、女の人のイヤって、何処まで本気かわかんないじゃない。
 とりあえず言う、みたいな感じだし」
と言ってくる。

 いやいやいや、私は全部本気ですよ?

 目の前で、こちらの話には興味なさそうに文庫本をめくっているおじさんにも、目を閉じているOLさんにも、全部聞かれている気がするな、と思っているうちに降りる駅に着いた。

 神田も一緒に降りてくる。

「家まで送ってあげるよ」

「ううん。
 大丈夫」