うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 



 神田は車で来ていたようなのだが、何故か電車で送っていく、と言い出し、二人で電車に乗っていた。

 電車は混むというほどではなかったのだが、座れる場所はなく、二人で並んでつり革を握っていた。

 神田は相変わらず、涼し気な顔をしていて、さっきまでの彼とは別人のようだ。

 窓から暗い外に景色を見ながら言う。

「高校は違ったじゃない」

 ふいに振られた話題に、ついていけないまま、……うん、と瑞季は反射的に答えていた。

 ついていけなかったのは、まださっきのことを考えていたからだ。

 だが、神田は、もうそんなこと忘れたかのように、窓に映る自分たちを見ている。

「でも、電車は一緒だったんだよ」

「えっ? そうなの?」

「いつも違う時間だったり、違う車両だったりしたけどね。

 たまに、隣の車両とかになったら、そっと君の方を見てた」

「なんで話しかけてこなかったの?」
と言うと、

「情緒ないねえ」
と苦笑いする。

「やっぱり、放すんじゃなかったよ」
と言って。