うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「やめてっ。
 そうよ。

 あのときのことが無理やりなはずはない。

 だから、あれは神田くんじゃないわっ」

 そう言うと、身を起こした神田は、瑞季の上に座ったまま訊いてくる。

「あれっ?
 相手が誰だか思い出しちゃった?」

「いや……いや、誰かはわからないんだけど。
 私があのとき、嫌がってなかったことだけは思い出したわ。

 そうか。
 神田くん、もしかして、それを私に教えてくれようとして……?」

 神田の横、窓から見える体育館からは、明かりが漏れ、そーれっ、というバレーの練習のものらしい掛け声が聞こえてきていた。

 此処とは全然違う、平和な別世界がそこにあるようだった。

 今、一瞬、その世界に戻れそうな気がしたのだが、瑞季の上に居る神田はいつものように上品にニッコリと微笑み、
「違うよ」
と言ってきた。