うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜





 今日は途中で、外回りに出たので、いらぬ時間を取ってしまった。

 さて、戸締まりして帰るか、と了弥が思ったとき、スマホが鳴った。

 その名前を見て、出るのをやめようかと思ったが、結局、出る。

 俺も甘いな、と思いながら、
「もしもし?」
と機嫌悪く言うと、すごい勢いで瑞季がまくし立ててくる。

『了弥っ。
 誰かが私に、バーカッて』

「はあ?」

『バーカ、バーカッて』

「……それは俺の心の声だ」

 そうじゃなくてっ、と瑞季が叫ぶ。

『来てっ、了弥っ!』

 結局、俺を頼るくせにな、と溜息をつきながらも、手早く戸締まりを済ませた。