うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 


 昼休みが終わるので、ロビーに居たみんなが、コーヒーのカップや、アイスの紙を捨てにゴミ箱に行ったりして、動き始めた。

 了弥は少し迷って、笙の許を離れ、瑞季の側に行ってみた。

「あれから、神田からは連絡があったか?」
と問うと、瑞季は一瞬、びくりとしたあとで、

「……うーん。
 あったかな」
と曖昧にだが、答えてくれる。

 ホッとしながらも、此処で話さなくなったら、かなりヤバイ兆候だよな、とも思っていた。

「なにか思い出したことがあるんだって。
 夜、学校に来ない? ってメールが来たの」

 一旦、口にすると、本当は相談したかったのか、瑞季はいつものように話し始めた。

「夜の学校か」
と呟くと、

「まあ、先生って、結構遅くまで残ってるもんね。
 忙しくて出ては来られないのかも」
と少し小首を傾げながら瑞季が言う。

 ちょうど誰かが渡り廊下の扉を開け、風に吹かれた、いい香りのする瑞季の髪が鼻先をくすぐった。

 いつも、瑞季が先に入ったあと、風呂場に漂っているのと同じ匂いだ。

 一緒に暮らしているという優越感が、少し心に余裕を生じさせていた。