廊下を歩いていた了弥の耳に、その言葉は飛び込んできた。
「じゃあ、真島課長、私にちょうだいよ」
月橋エレナの声だ。
えっ? と瑞季が言っている。
「いらないんなら、ちょうだいよ。
あの人、意外と悪くないかもって最近思い始めたの」
「えっ、やだっ」
という瑞季の、思わず、といった感じの返事が聞こえてきた。
つい、笑ってしまう。
「へー、月橋エレナはお前が好きなんだ?」
そんな声が耳許でした。
誰かが急に肩にのしかかってきたと思ったら、笙だった。
しっし、と手で払う。
「なに、にやにやしてんの?
相楽さんが、お前をやらないって言ったから?
いやー、単に、人がくれって言ったから、惜しくなっただけかもよ?
ほら、お前って、相楽さんから見て、都合のいい男っぽいじゃん」
と言われ、笙の足を踏んだ。



