うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 



 悪い夢を見た。

 いや、此処のところ、悪い夢が多いのだが。

 ちょっと口には出せない悪い夢だ、と思いながら、瑞季がリビングのドアを開けると、
「おはよう」
ともう着替えていた了弥がいつも通りに挨拶してくる。

「お前は、珈琲か? 紅茶か?」
と訊いてくる。

「あ、珈琲」
と言ったあとで、

「私がやるよ」
と言ったが、

「いや、いい。
 もう朝食は出来ている」
と言われた。

「昨日は早く寝たからな」

 そ、そうですね。

「早く目が覚めたんだ」
と言う了弥はこちらを見ずに、珈琲をカップに注いでいたが、沈黙していると、目を上げ、

「運べよ」
と言ってくる。

「あっ、はいっ」
とまた思わず、職場のように返事をしてしまうと、笑う。

 いつも通りだ……。

 いつも通りすぎて怖い。

 このまま、なにもなかったことにするべきなのか。

 そんなことを考えていると、了弥は、
「まだ早いから、昨日の続き、見ながら食べるか?」
と訊いてくる。

「あ、うん。
 じゃあ、用意するね」
と二人分の珈琲をお盆に入れて運び、デッキを立ち上げた。