うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 大将が嬉しそうな顔をする。

「甘いでしょ、このイカ」
と神田もまた、自分の手柄のように嬉しそうに言った。

「ほんとだ。
 了弥が言ってたと……」

 言ってた通り、と言いかけ、止まる。

 神田はなにも追求せずに、ただ微笑んでいた。

 ……かえって、怖いよ?

「う、うちのおばあちゃんち、島なの。
 だから、イカとか獲れたて絶品で。

 街のイカとか食べられないなって思ってたんですけど。

 これ、すごく美味しいですっ」
と大将に言う。

「わかってくれる人で嬉しいよ。
 なんかおまけつけちゃおうかなー」
と言っている。

 寿司屋さんとか、天ぷら屋さんとか、老舗だとちょっと怖い人が居そうだな、と思っていたのだが、此処の大将は気さくな人だった。

「また来てね。
 話の続きも聞かせてね」
と帰り、送り出される。

「はい、ぜひー」

 話の続きのこと以外で、と頭を下げ、店を出た。

 神田が言う。

「また来ようね」
「うん」
と言うと、

「僕とね」
と睨まれ、念押しされた。