エレナの言う通り、追求しない方がいいのかなあ、と思いながら、瑞季は家に帰った。
エレナお薦めの美味しいイタリアンを食べてもテンションは低いまま。
しょんぼりトイレに入ったのだが。
トイレットペーパーをカラカラと引っ張った瑞季は思わず、叫んでいた。
「なんじゃこりゃ~っ!」
トイレットペーパーには、黒いマジックで、バーカ、と書いてあった。
マジックなので、突き抜けて、引っ張っても、引っ張っても、バーカ、バーカ、バーカ、と書いてある。
耳許で誰かに、バーカ、バーカ、といつまでも言われている幻聴に襲われる。
なんでっ?
今朝はこんなものなかったのにっ。
此処に入れるといったら、親か、不動産屋さん。
親がわざわざ、こんなもの書きに来るとは思えない。
さては、不動産屋さんっ!
……なわけないっ、と慌てて、トイレを飛び出し、鞄を漁る。



