うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

 お酒はちゃんと冷蔵庫に入って保管されているようだった。

「いや、神田くん呑めないじゃん。
 いいよ」
と言うと、

「でも、相楽さんに、此処の美味しい天ぷらで一杯やって欲しいんだよ。
 日本酒好きなんでしょ?」
といつの間にそんなことしゃべったっけ? というようなことを言ってくる。

 酔ってるときだな、きっと……。

 ねえ、と神田は大将に向かって言い、大将も、そうですよ、と勧めてくる。

 天ぷらを褒められて、機嫌良く、
「彼氏がそう言ってくれてるときは、素直に甘えて呑んだらいいよ」
と笑っていた。

 いやあの、彼氏じゃないんですけど、と思ったが、そういう否定も、今、此処でわざわざするのもな、と思い、黙っていた。

「じゃ、ちょっとだけ」
と大将の、今のお薦めだという酒をいただく。

「そういえば、神田くんってピアノとか弾けるの?」

 ふと訊いてしまったあとで、まあ、イメージ的にも弾けるか、と思った。

 神田の家の広いリビングには、大きなグランドピアノがあったし。

 神田くんのママが学校で習った曲とか弾いてくれてるとき、可愛い仔犬のスピッツが駆け回ってたっけな、と思い出す。

 油断していると、小さな自分たちの頭に飛び乗る勢いで駆けてきて、顔を舐められた。