うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜





「あんた、莫迦じゃないの?
 なんで、真島課長に言っちゃうの?」

 夕ご飯は、エレナとイタリアンに来ていた。

 連続で外食は痛いが、一人で家に帰る気分じゃなかったからだ。

「いや、なんだかんだで、一番信頼してるから」

「いやだからさ」
とエスプレッソのカップを置いて、エレナは言う。

「そんな課長に何故言うのよ。

 好きなのかと思ってた。
 課長のこと」

 いやいやいやいや。

 ないだろう。
 ない。

 同期で一番仲がいいのは確かだが。

 向こうは課長様だし。
 私に対して、向こうがそんな態度を取ったこともないし。

 だからというのではないが、そういう風に見たことはない。

 ……たぶん。

「ねえ、課長、その話したとき、どうだった?
 怒ってた?」

「呆れてた」

 まあねえ、とエレナは呆れた了弥に同意する。