三人の様子に変化が表れたのは実験開始から30分が経つ頃だった。
「紗由理?どうしたんだよ紗由理!」
寺井くんがそう叫んでいなかったなら僕らが気づくのはもう少し先になっていたことは確かだった。
「なんだよ寺井?」
「たっちゃん。紗由理の呼吸おかしいんだ」
「…………呼吸?」
僕らの視線は自ずと眞木さんに向けられる。
眞木さんの身体は小刻みに震えている様にも見えたが、画質の荒いモニター越しでは確かなことは言えない。
でも、寺井くんが言うように呼吸に乱れが見られた。
「なんで?何でだよ!?」
眞木さんのお腹がしきりに上下動をしていた。
これは普通の呼吸ではありえない。
「「「30分が経過しました。」」」
白仮面の機械音で僕は無意識に唾を飲んでいた。
あり得ない。そう思いながら、もしかしたら三人の身に何かが起こる。
起こってしまうのではないかと怖くなっていたんだ。
「眞木さん、30分出血量は572.33ccです。
身体に異常はありますか?」
「500ccを越えてる。もしこれが血液だったなら中学生の体格からしたら献血ですら採取しない量だ…………」
友澤くんの震える声。
血液だったなら、というのは仮定の話ではないんだ。
今回の実験の目的を今になって思い出す。
「心臓が早いの。息もなんだか…………ねぇ、もう良いでしょ?」
「頻脈と軽度の過換気症状が見られますね。実験はこのまま継続します」
経過観察。
まるでモルモットを観ているかのような無機質で無慈悲な。
「なぁ、まさか本当に死なないよな?」
「し、死ぬわけねぇだろ!見ろよ眞木は一滴も血を流してすらないじゃねぇか!」
「だったら!!」
寺井くんは眞木さんを見つめ、そして佐野くんに涙目で振り返った。
「だったらなんで、紗由理はあんなに苦しそうなんだよぉ…………」
佐野くんはなにも言い返してあげることができずに、寺井くんから目をそらした。
その瞬間に大粒の涙が一粒、寺井くんからこぼれ落ちた。



