ケンショウ学級


「「「さぁ、まだ説明は続きます」」」

白仮面は変声器で声を変えているから、声色から感情を知ることはできない。

それなのに嬉々としてこの実験の説明をしていることだけは察せずとも伝わってくる。

胃の中の物が逆流してくるような不快感。

僕は無意識にみぞおちの辺りを手で押さえていた。

「「「少しここまでの話を簡単にまとめましょう。

今から君達にはナイフを使って1秒に1滴の血液が流れるように傷をつけます。

個人差や性差がありますが、およそ1時間42分後には君達は出血の致死量である2リットルの血液を失い死にます」」」

モニター越しにも三人が震えているのが分かった。

僕らは白仮面の言動にある違和感を抱えながら、それでもこれから起こるかもしれないクラスメイトの死というものに怯えていた。

睨むようにモニターを見つめている人はそれほどいなかった。

恐怖から逃れるために耳を塞いでいる人も多い。

何人かはモニターに背を向けて頭を抱えながら泣き崩れていた。

「「「血液が身体から失われていく途中に様々な症状があると確認されています。

まずは心臓が早くなる頻脈、そして皮膚症状が…………皮膚が寒く感じたり、青白く変色したり、寒気をもよおすこともあります」」」

最低な言い方だが、僕らは部外者だった。

最低な行動かもしれないけど、僕らは耳を塞ぐことができた。

目を背けることができた。

だけど、手術台で拘束された三人は自分の死を説明する声から逃れることも、頭を抱えることも、涙を拭うことさえ許されていないのだ。

それがどれだけ恐ろしいことか、僕らは本当の意味で当事者の苦しみなんて言うのは分かってあげられないのだ。

「「「そして更に多量の出血をすることで内臓は正常に働くことができなくなり、多臓器不全を引き起こします。

ここで運が良ければ失神することができます」」」

多臓器不全の失神が運が良ければ?

「…………確かに、それなら気を失った方が楽だ」

春馬が小さく言った。

「どういう意味?」

春馬は目線だけを動かして、僕以外の誰の耳にも入らないであろうことを確認した。

そして小さく、でも震えた声で言った。

「失神してしまえばそれ以上苦しむことはない。もし、失神できなかったら…………死ぬまで自分の血液が抜けていくのを感じなくちゃならないんだぞ?

そんなの…………気がおかしくなるだけじゃないか」

その声の震えは恐怖ではなく憤りだと分かった。

春馬は震えながら、まっすぐな目で白仮面を睨んでいたのだから。