ケンショウ学級


男は顔を使って、舌を使って、頬を机に沿わせてご飯を確認する。

そして無いと分かるとまた元の位置へと戻っていった。

本当にその姿は飼い慣らされた「犬」そのものじゃないか。

「胸くそわりぃ」

「ほんと意味わからないね」

佐野くん達の不満も最もだよ。

クラス全員の気持ちを的確に表している言葉だと思った。

そう、この不快感をもっともな言葉で表現するなら…………




胸くそ悪い。の一言に尽きる。






「さぁ、これで実験の過程は理解してもらえたと思う。

では次が本番だ」

モニターは点かないまま、またあのアイツの声が響いた。

次が本番か。

確かにそうなる、これによって人間にも古典的条件付けが適応するかどうかが分かるのだから。

「人は物を咀嚼する準備として、ご飯を見つけると消化するために無条件に反射として唾液の分泌を始める。

この男はサイレンの音と共にご飯が提供されるという状況を反復して学び、「サイレンの音」と「食事」を関連付けさせている。

その結果として食事の無条件反射である「唾液の分泌」が、「サイレンの音」という本来ならば関連のない事象によって引き起こされる様にもなったのではないか?という疑問が沸いてくるわけだ」

男の説明は今まさに僕らが見た光景を説明したものだ。

勿論男の講義なんて誰も聞いていない。

そんなことは恐らく百も承知のことなんだろう、男は間髪入れずに言葉を続けた。

「では、「サイレンの音」を聞いただけで男が「唾液の分泌」を始めたら。

これは繰り返される学習によって、本来は関連のない「サイレンの音」が「唾液の分泌」を誘引したと考えられる。

さぁ、果たして結果は?」