それは突然に、閉鎖された空間めいっぱいに響き渡った。
「うわぁ、うるせぇ」
「いやぁぁぁぁぁぁ」
空襲を告げるサイレンをこんな場所で音量を最大にして浴びせられているかのような轟音。
いや、実際にそれを浴びせられているのだろう。
ふと目に写ったモニターで皆の脳波が激しく波をうっていた。
「うわぁがあああああ!
おあああああああああああああ!!」
そして、男は叫びだし目隠しをされたまま真っ直ぐに歩き始めた。
四つ這いで、男性器と脂肪ののった腹を揺らしながら。
まったく…………なんて品のない。
サイレンはようやく止んだが、短い時間での強い聴覚の刺激でなんとなく平衡感覚が狂わされている様に感じた。
それは僕だけではなかったんだろう、サイレンが鳴り響くまでは立って見ていたクラスメイトの半分ほどは座っていた。
「これを見せて何がしてぇんだよ…………」
春馬の本音が小さく落ちた。
それは、たぶん…………
でも、大丈夫だ。
僕の考えが正しければ今のサイレンで誰も何も起きていないのなら、この実験で命を落とす人はいないだろう。
「うげ、食ってるよ」
男は目には見えないけど、何らかの方法で手足を封じられているのだろう机の上に顎を乗せて食事の容器を探して口のみを使って貪る。
それはもはや人間としての最低限の尊厳すらもない姿で、本当に犬なのではないかと錯覚をしそうになるものだった。
「あ、装置が反応してる」
「え、嘘。ほんとだ」
聞こえてきたのは乾いた言葉だった。
今目の前でこれだけの不気味な光景が広がっているというのに、モニターを見てその反応を淡々の口にする。
しばらく無音の空間に誰かが時おりポツリと呟く声と、男がご飯を貪る不快な音だけが響くのだった。



