設備はまだある。
僕らから見て左手にはサイレンの様な音響機器が取り付けられている。
やはり、プリントに書かれた実験を検証する為の施設なんだろう。
そこで僕がふと、ある疑問を浮かべた時だった。
音もなく扉を開けた何かが男の前の仕切られた部屋に入ってきた。
その手にはお盆に乗せた質素な食事がある。
「まずは皆さんに特定の音と共に食事を提供した時の唾液の分泌量の変化を確認してもらいましょう」
僕らにだけ聞こえているのか、放送が鳴った時にも男の様子に変化はなかった。
仕切り部屋に入ってきた人物は真っ黒の装飾で、顔を仮面で隠していた。
ヴェネチアの有名な仮面の様な、思わずみいられてしまうような仮面。
それのようにきらびやかな物ではなく、白くどこか吸い込まれそうなものだった。
「なにあいつ気持ち悪い…………」
赤坂さんがそう吐き捨てると、まるで聞こえたいたかのように仮面の人物がぐるっと首だけを回して赤坂さんを見た。
「…………ひぃ」
驚いて尻餅をついた赤坂さん。
仮面の人はまた頚だけを元に戻して、ゆっくりと仕切り板の穴が開けられた部分の前に立った。
そして、その空間に音が響き渡る。



