「来い04番」
「……はい」
金子くんは震えながらアキラについて行こうとした。そこに春馬が割って入る。
「佐野くんの言う通りだな。なに?偽善者」
「確かにお前の言う通り『役割』を全うしてないと見なされたら罰があるかもしれない。
ただ、せめてVIPルームが何かは教えてもらう」
アキラはしばらく無機質な床を見つめ続ける。そして面倒くさそうにため息を吐いて話し始める。
「そんな怖い顔すんなよ笹木。それに、みんなもそんなにビビんなって。最初の3つの約束忘れたのか?『暴力は禁止』だろ?
ただの監禁部屋だよ、いわゆる懲罰房ってやつだろ」
「懲罰房って……いったいそんな部屋がどこに?」
委員長の問いにアキラは皆に聞こえるようにわざと大きな声で、さも演説かのように喋る。その仕草が、口調が、語りかけが無性に君が悪かった。
「フリースペースから食堂に入るには何故か、2人しか通過できないように扉が設置されていてそこに空間があった。ここからはただの壁だけど、食堂に入って右手を見るとそこも壁になっている。
明らかに不要なスペースだと思ってね、その空間を調べてみたら凹みに見えるように細工されている引き戸の取手を見つけたんだ」
そんなこと全く気づかなかった。いや、囚人がそこに気づくことはない。なぜなら看守に監視されて自由に動き回ることはできないからだ。
「……中には何があるの?」
中澤さんの疑問は誰もが思っていることだっただろう。それには間をおかずにアキラは答えた。
「何も。ただ椅子が1つとそこに2人しか入れないようなスペースがあるだけだよ。
04番には明日の起床時刻までその懲罰房で過ごしてもらう。以後、食事を残したり、識別ナンバーを遵守しない者、囚人・看守に関わらず役割を全うしない者には懲罰房へ入ってもらう」
アキラは春馬を押し退けて、金子くんの腕を引いていく。
「アキラ、オレら友達だったじゃんかよ?なぁ?
こんなことして、お前は楽しいのかよぉ!?」
泣き叫ぶ金子くんを引きずっていくアキラ。皆が見ていたのに、誰も助けようとはしなかった。
「じゃあ04番、また明日」
「やめて、暗いよここ、アキラ!アキラ!誰か助けてぇえ!!」
アキラは笑って扉を閉めたらしい。その部屋は一筋の光も入り込まない暗室になっていた。
目は暗闇に慣れる為に、僅かな光でも集めようと瞳孔を開く。しかし、それは僅かでも光があればこそ視界を開くものであって、完全な闇の中では意味をなさない。
自分の手のひらさえも認識できない闇の中で、目を瞑っていても開いていても同じ黒一色の世界に数分でも耐えるのは難しい。
「嫌だあぁ!誰か!!誰か!!!
ママぁぁぁあっ!!!」
それからしばらく懲罰房からは壁を叩く音と、悲痛な叫び声が響いていた。消灯の時間を迎えても、叫び声は響き続け、独房で眠ろうとする僕らの耳の奥でずっとこだまするのだった。



