それを見つけたのはたまたまだったのだと思う。そして、それを見つけたのが彼だったことも偶然に過ぎなかったのだろう。アイツの教室に映し出されていたモニターの黒かった1つに淡い光が差し込んだ。
そう、この幾重かの偶然によって、必然的に作為的に平穏な監獄生活は終わりを告げ、最悪の心理実験の成果が生まれ出すことになる。
夕方の勉強が終わり、僕らは30分の休憩時間を過ごしていた。ドッジボールで汗を流す人、元々仲の良かったグループで話す人達、そして僕は委員長とフリースペースの端で話をしていた。
「全てのことを改めて確認する?」
「うん僕らが実際に見てきたこと。聞いたはずのこと、見たはずのこと、伝え聞いたこと……」
フリースペースの隅で体育座りをして話をする。委員長の顔は真剣だ。
「なるほど、つまり。上杉くんは今までにあったことと、想像の域を出ないことを確認したいんだね」
僕のあんなつたない言い方でも伝わったのは流石の一言につきるな。
「よし、じゃあまずは実際に確認したことを整理しよう。まず僕らは『ケンショウ学級』というゲームに強制的に参加させられた、30日の期限付きだけれどこれまでの食事は監獄での規則正しい食事と、教室での4回」
「検証実験では実施検証に出ている生徒以外は必ず同じ空間にいたこと。皆の左肩には傷がなかったこと……」
頷いていた委員長が、肩の傷の話をした時に相槌をやめた。何を気にしているのか、少し遠くを見つめている。
「事実として皆の左肩には傷はなかったね。でももしかしたら、映像にすら仕掛けがあったかもしれない……例えば反転とか」
「反転……?」
僕の目線は自然と春馬の方へと目をやっていた。それにふと気づいた春馬が手を振ったので、僕は笑顔を取り繕って小さく手を振った。
「映像はそれだけじゃない。ブアメードの血の時も不自然な点があったよ。アナウンスは各部屋から聞こえてきたけれど、一言一句3人の白仮面の声がそろっていた。あれだけの説明があった中で、そんなことはありえない」
「録画か……アテレコ……とか?」
「可能性はかなり高いだろうね。そう考えると、アイツの仲間は少ないと思う、協力者がいたとして多くても2人、いや1人か、な」
委員長の推測があってるとして、ならこのクラスには『アイツ』と『白仮面』がいるということなのだろうか?なんだろう、それに関してだけは何故か納得できないんだよな。
「あのさ委員長、アイツの言ってた『この教室に犯人がいる』って……」
「藍斗、よーへい、さっきから楽しそうになんの話してんの?」
僕の中にある疑問の核心をつこうと思った時、偶然に春馬が会話に入ってきた。春馬はいつも通りの笑顔を見せている。
「や、笹木くん。今、上杉くんと現状の情報の整理をしていてね。これがアイツを見つける手掛かりになれば良いのだけれど」
「……そっか。オレらの友達を奪ったアイツは許せないもんな」
俯いて春馬は拳をわわなわなと震わせていた。その表情は確かな『アイツ』への感情だった。それだけは、僕でも分かった。
その時、休憩時間の終わりを告げるブザーが鳴り響いた。
「さぁ、休憩時間はお終いだ、それぞれの独房に入って」
立ち上がり春馬がそう皆に告げた。僕達は顔を見合わせて、頷き独房へと帰っていく。



