ケンショウ学級


明かりのない教室。

教壇があったのであろう位置には3脚で固定されたカメラが設置されている。

黒板の上には10台ほどのモニターが並び、各独房、フリースペース、食堂、事務室、そしてまだ写らないものが2つ。

そんな教室を訪れる人物がいた。

「おや、実験の最中に来るなんて非常識だね。これで君が怪しまれたら困るのは、君自身だろう?」

その教室の中央で椅子に座り、予期せぬ来訪者に話しかけていたのは皆にアイツと呼ばれる男だった。

教室の扉をピシッと閉めて、その生徒は口を開く。

「……もうそろそろ平穏な監獄生活は終わりそうだからね。その前にお前に宣戦布告をしに来た」

その生徒はモニター越しの同級生を見つめて言った。そこに写された狂気と恐怖に溺れる姿を見て。

「--宣戦布告か。少し悲しいな、君とはそれなりに長い付き合いだというのに、その敵を見るような目は変わらないね。

それはそうと『犯人探し』には君でも冷やりとしたんじゃないのかい?」

暗闇で顔の見えない生徒は右肩を抑えながら、アイツの言葉に心を乱されていた。

「彼らに見せているのは反転処理をした映像だ。実際には左肩ではなく、切られたのは右の肩。

寺井くんは正に“必死“の覚悟でやりとげ、一見すれば確実にそれだと分かるほど深い傷を残してくれた。こういうことがあるからケンショウ学級は辞められない」

しばらくの沈黙が暗い教室を包む。謎の生徒は最後に一言言い放ち教室を去っていく。

「……今度こそお前を排除してこの学級を終わらせてやる、覚悟しておくんだな」

残されたアイツは手で顔を覆う。

そして、つんざくような、叫び声のような笑い声を上げるのだった。

「----くく。あっはっはっはっは!はぁぁあっ!!

良いよ、イイよ、最高ぉだよ!!楽しみにしているよ。僕を排除するということは、君は僕と心中をするということだ。本当に--本当に素晴らしい生徒を持てて僕は幸せだよ」

その時アイツは震えながら昇天していた。狂気に充ちた笑顔で、狂気そのもののような瞳で。

しばらくして、何事も無かったかのように監獄に戻ったその生徒を見てアイツは不敵に笑った。そして、三日目にしていよいよ最初の犠牲者が現れることになるのだった。

「--人は閉鎖された空間の中でどこまでも残酷になれる。僕を殺したくて仕方ない君のように、そして僕のように……ね」