ケンショウ学級


体操をして、独房に戻り朝食が配られた。今日のメニューは麦飯、お新香、ワケギが数個入った味噌汁とししゃも2尾。

質素と言えば確かに物足りなさもあるけれど、味は良いのでご飯は一日の楽しみでもあった。僕はちょうどいいけれど足りない人とかも居そうだよな。

朝食の最中は円山くんと見根津さんが僕達の監視をしていて、他の看守達は事務室に居るようだった。

「ふぅ、ご馳走様でした」

僕は手を合わせてそう言った。それを見た見根津さんがトレイを受け取りに来てくれた。

僕はプラスチック製だと思われる食器を重ねて、トレイに乗せて見根津さんに受け渡す。

「見根津さん……?」

トレイの上の重ねられた食器がカタカタと音を立てた。その震えは見根津さんのものだった。

「見根津さん大丈夫?」

見根津さんはどこか遠い目で独房の中を見渡して、ぶるっと大きく震えたかと思うと、奪い取るようにトレイを持ち、去っていった。

しんとした空間。食器の擦れる音と時折聞こえる看守達の声。不気味で不自然な生活を強いられている、アイツは初日の説明以降何も言ってこない。きっと何処かしこにある監視カメラなどで僕らを“見学“しているのだろうな。

「って……10番、ししゃもの頭残すなよ」

「頭とか無理だよ」

「それでまた僕まで罰をくらうのは御免なんだよ。しっかりしろよ」

カチンときたのだろう、亮二は箸をバチッとトレイに置いた。

「円山看守、ご馳走様でした!」

そう言って見回りの円山くんにトレイを渡す。

「ししゃもの頭……オレも苦手だしな。まぁ、こんくらい良いだろ」

そう言って円山くんはあっさりと亮二のトレイを受け取り、片付けに行った。亮二は「見たか」とでも言いたそうな視線を僕に投げつけて、ベッドの上段へと登って横になった。

「3日目……アキラに見根津さんの様子が明らかにおかしくなってる。今日の自由時間は委員長とかに話を聞いてみようかな」

囚人役は『アイツ』の容疑者に選ばれるだけあって、学力が高い人も少なくない。これからの対策とかも考えたいし、看守達の立場もなるべく把握したい。それに関しては春馬が適役だけれど、囚人から看守にコンタクトは取りずらい。

「うーむ、困った……」

全ての独房のでの朝食が終わり、僕らの勤労そう勉強の時間だ。

フリースペースに出て左手は消毒をかけられたシャワー室に繋がる鉄の扉、右手には食堂兼勉強部屋となる広間がある。

それぞれの看守がやってきて扉を開けて勉強部屋へと誘導していく。

不幸中の幸いなのかなんなのか、こんな誘拐にあった様な状況でも勉強ができるのは少し有難かった。

勉強に集中すると嫌な記憶も少し薄まる。本当は皆で一緒に勉強をしているはずだった。大上先生の脱線した話ももっともっと僕は聞かたかった。それはもう叶わない。

「今日の弁当美味かったな」

「あーたしかに。看守達役で良かったわほんと」

事務室にでは囚人よりも、少し豪華な昼食をとった看守達が満足そうに言っていた。その中の輪に入れない人、そして、入ろうとしない人を除いて。